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〝とにかく「社会貢献」と「未来」を語る若者〟を生んだのは「24時間テレビ」かもしれない

現在観測 第1回

 自分が高校生くらいの時だったと思うが、この番組で、障害を持つ方が山登りにチャレンジしたものの、途中までしか登ることができなかった回がある。武道館のレギュラー陣は「それでも力の限りよく頑張った」とこぞって涙している。その時、当事者は、もっと頑張んなきゃいけなかったのにどうして自分は褒められているのだろう、というような戸惑った顔をした。あの顔が忘れられない。この番組の愛は、地球のためにあるのではなくて、それぞれの受け手のために捧げられるのだな、と知った。

 テレビ局のHPを見ると、24時間テレビの事業は「社会貢献」に位置づけられている。「社会貢献」のために行なわれてきた番組は、「自分」のために良き効能を持ってくる、明日から頑張れそうな気にさせてくれる番組。

 となれば、リア充と難民問題を同じ文脈で続けたシェアウスの女性は、そんなに突飛な思考をノートに書き連ねていたわけではないのかもしれない。マスコミの面接で目を泳がせながら社会貢献を訴えた男子学生には、妥当性があったのかもしれない。24時間テレビはこの日本の「社会貢献」のイメージを司ってきた。「善い事をするとイイ感じに伝わる」というテーゼを、個人に染み渡らせた番組なのである。

 ここでもう一度、ルームシェア女子の「11」と「12」をおさらいしよう。

「11:1ヶ月後までスケジュール一杯!」

「12:アフリカ等、難民問題に対するボランティア活動」

 これを実現できているのは誰か。実現してきたのは誰か。驚くなかれ、24時間テレビのパーソナリティだ。あの番組のパーソナリティは、めっちゃ忙しそうな合間を縫って、ボランティア活動をしてみせる。僕は、ルームシェア女子が「11」と「12」を繋げたことにたいそう驚いたのだけれど、意外にも連関しているのかもしれない。「自分探し」と「社会貢献」は、辞書的な文脈ではかけ離れている。前者はちょっと鼻で笑われ、後者は闇雲に讃えられる。だがしかし、この2つは繋がっている。「11」と「12」の接続は、ルームシェア女子のオリジナルではなく、「24時間テレビ」が長年かけて成し遂げてきたことだったのか。

「24時間テレビ」の最後に流されるテロップが「本当の主役はあなたです」から、いつの間にか「生きていることを素晴らしいと思いたい」に変わっていた。ハードルを下げたのか上げたのかすら分からないが、このメンタリティは若者をどこまでも大雑把に鼓舞し続けるのだろう。

 

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武田 砂鉄

たけだ さてつ

1982年生まれ。ライター/編集。2014年9月、出版社勤務を経てフリーへ。「cakes」で芸能人評「ワダアキ考 ~テレビの中のわだかまり~」、「日経ビジネス」で「ほんとはテレビ見てるくせに」を連載中。雑誌「beatleg」「TRASH-UP!!」でも連載を持ち、「STRANGE DAYS」など音楽雑誌にも寄稿。「Yahoo!個人」「ハフィントン・ポスト」では時事コラムを執筆中。

 


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